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2段階で考える避難

2段階で考える(命を守る~家族との連絡)

川上:サポートコミュニティ飛騨の川上哲也です。前回は災害時の避難を2段階で考えるという内容でお話ししましたが、先週は春の高山祭でお休みを頂きまして、今週は先々週お話しした2段階の最初の部分、いかに命を守るか、家族とどうやって連絡を取るかについてお話しさせて頂きますね。

遠藤:宜しくお願いします。川上さん、先ずは前回のおさらいからいきたいと思うんですけど、災害時の避難を2段階で考えるということについて、もう一度、簡単にお願いできますか?

川上:はい、災害時の避難については、今まで命を守るという部分と、助かってから後の部分がごっちゃになって教えられていたんですけど、これを1段階目である「命を守る」から「家族間の連絡」までの部分と、その後の2段階目の「避難」及び「避難生活」の2つに分けて考えて、災害発生時は1段階目を優先して考えなければならないということですよね。

遠藤:そうでしたよね。過去の災害では、非常持出袋を準備している間に避難するタイミングを失ったというケースもありましたけど、この非常持出袋というのは避難した後に役立つものですから、これは2段階目のもの。だから、災害発生時はとにかく命を守る、早く避難する、そして家族と連絡を取るということに専念して欲しいということでしたよね。

川上:そうですね。そして今回は、その1段階目についてもう少し詳しくお話しさせて頂きますね。

遠藤:それじゃあ、先ずは「命を守る」について、家族でどんなことを話し合っておくべきなのかからお話し頂けますか?

川上:はい、この命を守るということについて家族で話し合う内容についてですが、地震対策としては、先程お話ししました1段階目の前のゼロ段階と言いますか、事前の対応ということで、安全な家にどうやって改善していくかについて話し合うことから始めて欲しいですよね。

遠藤:安全な家にどうやって改善していくかって、家の耐震補強をするということですか?

川上:家の耐震補強については、お金のかかることですが、昭和57年以前に建築された家にお住まいの方は、一度耐震診断と耐震補強について検討して欲しいですよね。耐震診断は無料で受けれますし、耐震補強についても補助がありますからね。

遠藤:補助の相談については高山市役所に連絡すれば良かったんですよね。

川上:そうですね。さて、この耐震補強についてはそれくらいにしておいてですねぇ、今回はそれ以外の話合いについてお話しさせて頂きますね。

遠藤:耐震補強以外には、どんなことを話し合っておけばいいんですか?

川上:先ずは安全な所に寝ているかを確認して欲しいですよね。リスナーの皆さんにも考えて欲しいんですが、1日24時間のうち4分の1から3分の1の時間は寝室にいるわけですよね。その他の時間はどこにいるかを考えると、8時間勤務の方だったら、24時間のうち9時間から10時間程度は職場でしょ。で、家の中で食事をする部屋には何時間、テレビがある部屋には何時間って具体的に考えていくと、やっぱり寝室にいる比率がかなり高いことがわかるんですよね。地震はいつ起きてもおかしくないですから、地震にあう確率の高い寝室をいかに安全にしておくかということも、命を守ることに直結するわけですよね。

遠藤:確かに寝室にいる時間って長いですよね。そして、寝てる時って無防備ですから、やっぱり安全にしておくって大切ですよね。

川上:そう、寝室では上から落ちてくる物、倒れてくる物を最小にしておくことも必要ですよね。タンスや本棚はできるだけ寝室以外に持っていくとか、家族で考えて欲しいですよね。それと、寝室の位置についても少し考えて欲しいんですが、阪神淡路大震災や中越地震などで倒壊した家を見ると、2階建ての住宅でしたら、1階部分が倒壊して2階部分がその上に落ちてきたというものも多かったんですよね。この他に、全てが倒壊したというものもありましたけど、先ほどの場合とは逆の、2階部分だけが倒壊して1階部分は残ったというものは少なかった…と考えると、倒壊の危険性がある建物だと、その家のどこだったら命が奪われ難いかについて考えて欲しいですよね。

遠藤:確かに1階部分だけが倒壊した写真は何度も見ましたけど、2階部分だけが倒壊して1階が残った写真というのは見た記憶がありませんよね。

川上:でしょ。そして次にはですねぇ、命を守るため安全な所へ迅速に避難するために、避難路となる廊下、階段を安全にしておく。物を置かない、ガラスなどにはフィルムを貼っておくということですよね。災害が発生すると頭の中がパニックになってしまうことも多くありますから、パニックになっても避難できるような状態にしておくことが必要ですよね。

遠藤:川上さん、話が少しそれるかもしれませんけど、一人暮らしのお年寄りの方に対しては、まわりの方が家の中の対応まですべきなんでしょうか?

川上:その一人暮らしの方がどういった方かにもよりますけど、自分の力でスタコラサッサと避難できない危険性がある災害時要援護者だという場合でしたら、できればまわりの方が寝室の安全性と、家の中の避難路の安全性を確認して欲しいですよね。個人のプライバシーに関わる内容ですから難しいかもしれませんが、過去の震災では、寝室の位置がわかっていることによって助かった命もあるわけですから、地域で命をいかに守るかについて考えて欲しいですよね。赤ちゃんや小さなお子さん、そしてお年寄りなど、自力で対応できない、或いは対応力が弱いと思われる方には、できるだけ安全な所にいてもらう、そしてイザという時に備えておくことが必要ですよね。

遠藤:川上さん、今日は1段階目の前のゼロ段階というか、地震対策のうち、事前にやっておくべきことが中心になりましたけど、この他に、事前にやっておくことってどんなことがあるんですか?

川上:災害発生時の避難の1段階目の内容である、命をいかに守るか、家族との連絡について話す予定が、事前のことだけで時間がきちゃいましたよね。さて、この他にやっておくべきことですが、万が一倒壊した家の下敷きになった方がある場合、救助作業を行わなければなりませんので、もし可能であれば、バールやジャッキなんかを用意しておくといいですよね。ジャッキは、車のタイヤ交換で使うようなものでも役に立ちますから、中古車として出す場合はだめでしょうけど、もし、車を廃車にするような場合でしたら、ジャッキだけよけておけばイザという時に役立ちますよね。なんだか、本題に入れずに終ってしまいますが、とにかく、とにかくですねぇ、地震が起きた時、安全に家から出ることさえできれば、かなりの命が救われるわけですから、生きて家から出るためにはどうしたら良いのかということをテーマに、是非是非、家族で一度話し合って欲しいですよね。
来週こそは、先日お話しした1段階目である「命を守る」と「家族との連絡」についてお話しさせて頂きますね。
  

4/8「2段階で考える防災」

4月8日放送
「2段階で考える防災」

川上:サポートコミュニティ飛騨の川上哲也です。先日、リスナーの方から「毎週聞いてますよ~」という言葉を頂いたんですが、そうやって声をかけてくださると本当に嬉しいですよね。さて先週は、災害の基礎の基礎ということで、備えによって災害になる時とならない時があるってお話しをさせて頂きましたよね。

遠藤:同じ揺れの地震が来ても、建物がしっかりしていれば災害にならないということでしたよね。

川上:そうですね。で、先週の最後に、災害による被害を少なくするためにも、先ずは家族で話し合ってみましょうとお話ししましたんで、今日はですねぇ、防災の基礎の基礎ということで、その「家族で話し合う内容」について一緒に考えてみたいと思います。

遠藤:宜しくお願いします。家族で話し合うこととして先ず頭に浮かぶのは、避難所はどこか?とか、非常持出袋には何を入れておくか?ということですよね。

川上:そうですね。確かに、避難所の確認とか非常持出袋が真っ先に浮かんでくる方も多いでしょうね。でもそれはですねぇ、防災訓練が避難所へ避難するという設定から始まるものが多いとか、防災の研修会では必ずと言っていいほど、非常持出袋について念入りに教えているために、もっともっと肝心な部分を見逃してしまう…ということもあるんですよね。

遠藤:もっともっと大切な部分と言いますと?

川上:避難所ってのは命が助かった方が行く所ですし、非常持出袋も命が助かってから役に立つものでしょ。

遠藤:確かにそうですよね。では、どんなことを話し合えばいいんですか?

川上:防災について家族で話し合う内容としては、3段階、或いは2段階に分けて考えるべきだと思います。これがごっちゃになってしまうから、「命を守る」という絶対にしなければならないことがおろそかになってしまうんですよね。

遠藤:川上さん、今まで防災研修会では、そういった、3段階とか2段階に分けて考えるなんてことは教わっていませんけど、どのように分けて考えればいいんですか?

川上:それはですねぇ、3段階に分けるとしたら、先ず第1段階として家族で最も重点を置いて考えて欲しいのが「いかに命を守るか?」、つまり、いかに助かるか? いかにして死なないか? 第2段階として考えて欲しいのが、「家族間の連絡と避難」、つまり安否確認と安全な所への避難。第3段階として避難生活について考える…というように、3つに分けると考え易いですよね。

遠藤:第1段階として、いかに命を守るか? 第2段階として、家族間の連絡と避難。第3段階として避難生活ですか。2段階の場合はどうなるんですか?

川上:2段階の場合は、第1段階として「命をいかに守るか?」から「家族間の連絡」まで。第2段階として「避難」と「避難生活」になりますよね。

遠藤:なるほど~。それじゃあ、今回の放送では、わかり易く、2段階に分けてお話しして頂きたいと思いますけど、この2段階に分けてみたものを見てみると、これって、災害が起きて最初に来るものから、時間が経ってから起こるものと、時系列的にもこういった並び方になりますよね。

川上:そうなんですよね。時系列的にもこういった並び方になりますし、最初に来るものの方が、より重要性も高いんですよね。例えば、いかに命を守るか?がおろそかになって命を落してしまったら、いくら避難生活について考えていても何にもならないですよね。

遠藤:確かにそうですよね。それじゃあ、逆の場合はどうなんですか?

川上:ある家族が、いかに命を守るか?だけを、徹底して考えたとしますよね。で、命は助かったけど避難生活用の物は全く用意していなかった。この場合と、さっきのように、避難生活については準備していたけど命を落としてしまったという場合、2つを比べて、遠藤さんだったらどっちを選びます?

遠藤:勿論、命が助かる方を選びますよね。

川上:ところが今までは、これがごっちゃになって防災訓練とか防災研修会で教えられていたでしょ。だから、そのために命を落としてしまう方もあるくらいなんですよね。

遠藤:それはなぜなんですか?

川上:それはですねぇ、避難してこんなことが大変だったとか、そういった生きてる方からの反省点の方が大きく聞こえてしまうことも原因の一つじゃないかと思いますよね。命を落としてしまった方の、何故か?があまり検証されていないというのが現実なんですよね。

遠藤:今のお話しを聞くと、なぜそうなるの?と思っちゃいますけど、例えば…ということで、過去の災害では、どんなことがあったんですか?

川上:例えば、としてお話しするならば、このヒッツでは何度もお話ししましたけど、過去の台風災害で、非常持出袋を準備している間に水かさが上がって避難するタイミングを失った場合などがわかり易いですよね。

遠藤:そういったケースはよく耳にしますけど、防災研修会とかではそれが改善されたんですか?

川上:残念ながら、殆ど改善されていないんですよね。さて、今の水害で非常持出袋を準備しようとして逃げ遅れたケースについて2段階で考えてみますと、「安全な所へ早急に避難する」というのが命を守る第1段階の行動になりますよね。で、逃げ遅れの原因となった「非常持出袋の準備」というのは、これは、避難生活を始めてから役に立つものですから、これは第2段階の行動に入ります。

遠藤:なるほど~。第1段階の行動を優先しなければならない時に、第2段階の行動を優先してしまったということですよね。

川上:そうなんです。非常持出袋を持って出ることができなかったために、避難所で命を落としたという方は、過去にあるか?と考えてみると、それはないですよね。だから、家族で防災を考える時も、第1段階である「命を守る、家族の連絡」を優先して考える、その次に第2段階となる「避難生活」を考えて欲しいですよね。ということで、今日は、具体的な話合いの内容にまではいけなかったですから、来週は、第1段階の、いかに命を守るか、家族とどうやって連絡を取るかについてお話しさせて頂きますね。  

災害になる時とならない時

川上:サポートコミュニティ飛騨の川上哲也です。さて遠藤さん、今朝はビックリしました。

遠藤:どうしたんですか?

川上:朝起きて鏡を見たら、髪の毛がえらい増えてて…。

遠藤:川上さん、ラジオだから見えないと思って…。

川上:エープリルフールですから、このくらいの嘘はいいかな…と。ということで、今日から新年度になりましたが、今年も宜しくお願いします。3月は卒業、退職そして転勤などいろんな別れもありましたけど、4月は入学や入社、新しい勤務地での仕事など、出会いも多い時期ですよね。

遠藤:ヒッツにも、新しいナビゲーターさんが入ってくださったんですよ。

川上:そうそう、さっき会いました。さてさて、年度始め、会社によっては今日が入社式という所もあると思いますし、職場によっては、このヒッツを聞きながら仕事をされてる所もあるようですから、何回かお話しした話にはなりますが、災害の基礎の基礎からお話しさせて頂きますね。

遠藤:お願いします。では、その「災害の基礎の基礎」はどんな話題を?

川上:今日はですねぇ、災害って、どんな時に起こるものなの?ということをお話ししますね。

遠藤:災害はいったいどんな時におこるものか? 地震とか水害とか台風とか、そういった災害がですか?

川上:まあ、そういった自然現象によって起こる被害なんですけど、どういう場合に災害になるか?が肝心なんですよね。災害になる時とならない時がありますからね。

遠藤:災害になる時とならない時?

川上:例えば、世界遺産の白川郷で、50cmの雪が積もったら、これは災害になるでしょうか?

遠藤:50cmというと、ひざ辺りか、それより少し上くらいですよね。それくらいなら、白川郷の皆さんにとっては、ちょっと多めかな…くらいの積雪じゃないですか?

川上:では、万が一ですけど、名古屋で50cmの雪が一面に積もったら、災害になるでしょうか?

遠藤:名古屋で50cmの雪が積もったら、道路の交通は完全にマヒしますよね。車は走れない、人も外に出られないなんてことになりそうですから、災害という呼ばれ方をするかも…ですよね。

川上:そうですよね。この場合、雪に対する備えをしているかしていないかによって、災害になるかならないか、違いが出てきてしまうんですよね。では、次に地震について考えてみましょうか。

遠藤:地震も、備えによって全く違うでしょうね。

川上:そうですよね。同じ震度の地震が襲ってきても、耐震性の高い家に住んでいる場合と耐震性の低い家に住んでいる場合では、被害の受け方が全く違いますし、家具の固定をしている場合と家具の固定をしていない場合では、家族のケガや家の被害状況も変わってきますよね。

遠藤:そうですよね。中越沖地震でも、耐震性の低い住宅が倒壊した割合が高かったって言われてましたものね。そして、中国四川の地震でも、耐震性の低い学校が倒壊して、子ども達の尊い命が奪われてしまったんですよね。

川上:そうなんですよね。備えによって、被害が全く違ってきますよね。中国四川の地震の場合でも、もし、学校や住宅が、震度6強や震度7に耐えられるものだったとしたら、あれだけの死者数になったかどうか…、遠藤さん、どう思います?

遠藤:たしか、9万人くらいの方が亡くなったんでしたよね。被災した家の写真を見たことがありますけど、耐震性の低い家が多かったなぁという印象があるんですけど…。

川上:そうでしたよね。レンガを積み上げてつくってある家が、鉄筋が入っていなかったためか、ガラガラッと崩れた感じのものが多かったと思いますけど、もし、あれらの家に鉄筋が入っていて、簡単に崩れるような構造じゃなかった場合、亡くなる方の数はどうなったでしょう?

遠藤:もちろん、少なくなりますよね。

川上:そうですよね。備えができていれば、災害で亡くなる方の数を、相当数減らすことができる…と言いますか、備えがしっかりしていれば、「災害」という呼び方をさせない状態にすることも可能になるんですよね。

遠藤:ということは、災害への備えは本当に重要ですよね。同じ自然現象が起きても、災害になる時とならない時があって、その分れ目は、備えができているかできていないか…なんですね。

川上:その通り…なんですが、残念ながら、耐震補強はなかなか進んでいませんよね。

遠藤:耐震診断を受けていない人も多いようですよね。実は、私の家もまだで…。

川上:あれま。この、耐震診断というのは、その住宅の持ち主が申請しないと耐震診断が行われないのですが、こういった行政側の「待ち・受け身」の姿勢だと、なかなか進みませんよね。でも、いろんな地域を見てみますと、例えば、木造住宅密集地などで、ここがふさがれると、避難路が失われることも考えられるなぁ…と思われるような所もありますから、こういった所については、自治体が、耐震補強重点地域を設定して、その地域については、自治体側から耐震診断を積極的に提案するとか、耐震補強に対する補助もかさ上げするとか、そういった攻めの対応も必要かと思いますよね。

遠藤:なるほど~。たしかにそうですよね。高山にも木造住宅密集地がありますし、阪神淡路大震災のように火災が発生すると、避難路の確保は非常に重要ですからね。

川上:これも備えのひとつですよね。さて、話を今日のテーマである「災害になる時とならない時」という話題に戻しますが、今日お話ししましたように、同じ自然現象が起きても、備えがしっかりしていれば、かなり災害を減らすことや、それが進めば、災害と呼ばせないレベルにまで抑えることができるということなんですよね。これを考えて、ぜひ災害への備えを考えて欲しいですよね。

遠藤:災害への備えを進めるには、まず何から手をつけるべきなんですか?

川上:いろいろありますが、先ずは、自分の命と家族の命をどう守るかを考えるべきだと思いますので、家族で防災について話し合ってみることから始めてみてはいかがでしょうか? ということで、来週は、家族で防災について話し合うべき内容についてお話しさせて頂きますね。  

09/3/25風の被害「ウインドシア」

川上:サポートコミュニティ飛騨の川上哲也です。宜しくお願いします。雪が降りましたね~、と、寒い話やら、あったかくなったという話やら最近はごちゃまぜになっていますけど、先週お話しさせて頂いた春の災害のうち、本当に残念ですけど、風の被害、起きてしまいましたよね。

遠藤:成田空港で起きた、フェデックスの飛行機事故の話ですよね。あれは、なぜ起きたんですか?

川上:いきなり専門的な話から入らなきゃいけないようですが、それじゃあ、原因の一つと言われているものをわかり易く説明するために、まずはこれから考えてみましょうか。遠藤さん、セントレアじゃわかり難いでしょうから、今は県営名古屋空港になった小牧の空港は、どの方向に滑走路が伸びているかご存知ですか?

遠藤:たしか、国道41号線と同じ向きですから、南北ですか?

川上:そうですよね。で、夏と冬、飛行機の離着陸の方向が違っているってご存知ですか?

遠藤:えっ!? 違うんですか?

川上:違うんですよ。冬の時期は南から北に向かって離着陸を行って、夏の時期だとこれが逆になって、北から南に向かって離着陸をするんですよね。これってなぜかわかります?

遠藤:もしかすると、今風の被害の話をしていましたから、風の向きが関係するとか?

川上:ピッタシカンカン!!

遠藤:ふっる~!!

川上:まあ、古いとか新しいとかは置いときまして、風は、夏は南からの風が吹くでしょ。で、冬になると北からの風。飛行機の場合、向かい風の方が揚力、つまり浮く力を得易いものですから、向かい風で離着陸をしようとするんですよね。ですから、夏は南風に向かっての離着陸、冬は北風に向かっての離着陸になるんですね。

遠藤:へぇ~、へぇ~、へぇ~って感じですよね。

川上:で、もし逆に追い風で離着陸しようとしたら、同じ速度でも揚力はどうなります?

遠藤:同じ速度でも、追い風の分遅くなったのと同じですから揚力は小さくなりますよね。

川上:でっしょ~。じゃああの事故で、飛行機が向かい風で着陸しようとした体勢で下りてきて、いきなり追い風に変わったとしたら、揚力はどうなると思います?

遠藤:揚力は急激に小さくなりますよね。

川上:そうですよね~。そこへ下降気流が吹いたらどうなります?

遠藤:そんなことになったら、墜落する危険性が高くなりますよね。

川上:そうなんですよね。飛行機が着陸体勢に入って、その時点では向かい風であったものが、ウインドシアという乱気流の一種によって急激に風向きが変わってしまったもんですから、揚力が下がった。そこへ、ウインドシアのダウンバースト、つまり下降気流が吹いたことが原因の一つになっているんじゃないかって言われているんですよね。

遠藤:川上さん、今、ウインドシアって言われましたし、ニュースでもその言葉がよく使われていたんですが、それってどういうものなんですか?

川上:これはですねぇ、大気中の垂直方向、または水平方向の異なる2点で、風の向きや速度が劇的に異なることで、地表面付近で発生するウインドシアは、先程も言いましたように、ダウンバースト、つまり、下降気流を伴っていることが多いんですよね。

遠藤:つまり、A・Bという2点があって、その風向きや風速が全く違ったということですか?

川上:そうなんですね。Aという空間を通っている時に向かい風であって、それに合せた着陸体勢を取っていた。で、その先にあったBという地点では、いきなり追い風や横風などに変わってしまった上に下降気流が加わって、着陸体勢が大きく崩れた…という説明だとわかり易いでしょ?

遠藤:わかり易いですけどすごく恐い話ですよね。ところでその、ウインドシアという現象が起こっているということは、わからないものなんですか?

川上:それについてはですねぇ、事故が起きた当日、成田航空地方気象台が空港周辺でウインドシアが発生していると注意を呼びかけていたようですし、飛行機側にもウインドシアを感知するレーダーが搭載されているものが多いようですから、ウインドシアが起きていたとすれば、それについては知っていた上で着陸を試みたんじゃないかなぁ~って思いますよね。

遠藤:ウインドシアが起こっていることを知っていても、着陸しなければならないんですか?

川上:いや、通常はウインドシアを感知したら速やかにゴーアラウンド、つまり、着陸のために下降していてもまた高度を上げて、ぐるーっとまわってもう一度やり直すことあるでしょ、あのゴーアラウンドなどの対処を取ることになっているんですよね。

遠藤:それじゃあ、そういった対処をなぜ取らなかったんですか?

川上:ん~、そこまでは、残念ながらわかりませんが…。今回のお話しは、あの事故の原因がウインドシアだったら…という仮定でお話しさせて頂きましたけど、その直前に、何機もが安全に着陸しているわけですから、原因は他にもあるかもしれませんよね。

遠藤:今回は、お2人の尊い命が犠牲になったわけですけど、こういった事故が今後起きないためにも、徹底的に原因を調べて欲しいですよね。

川上:そうですよね。特に航空機は風の影響を受け易いですし、浮かんでいる揚力は、風を起こす空気から得ているわけですので、徹底的な調査をお願いしたいですよね。僕なんかは、いまだに飛行機が苦手なもんですから、いつも乗る時に緊張して、足に力が入っちゃいますけど…ね。

遠藤:最後に意外な発言もありましたけど、今日は、風の被害のうち、ウインドシアについてお話し頂きました。春の強風も、馬鹿にできないですよね。